あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
ということで、大山祗神社へ年始のご挨拶に行って来ました。
さすがに1月5日のもなると参拝客の姿は少ないですね。
それはいいとして、気になることがあったので紹介します。
もし、大山祗神社に関係の近い方がいらっしゃったら、この記事を参考にして頂けるとよろしいのですが。。。
このページの目次
大山祗神社の御神木「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」が元気がない
大山祗神社のパワースポットとして有名な御神木。
樹齢2600年とされる「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」の元気がありません。
枝には蘚苔類がびっしり。
葉の数もずいぶんと少なくなっています。
クスノキは常緑樹ですから、冬になってもこんなに葉を落とすことはありません。
ちなみに過去の同じクスノキの写真はこちら↓↓↓
あきらかに衰弱しています。
サイト管理人2ka-tsukaは「みどり」に関する仕事をしています。(ちなみに技術士(公園・緑地部門)という資格ももっています。)
職業柄、「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」については注意して見ているのですが、だんだん樹勢が衰えているようにみえます。
特に今回みたときは「やばいんじゃない」と思うくらいに衰弱して見えました。
クスノキの元気がない理由
クスノキの元気がない理由を推察するに、最近できたこの石舗装が原因のひとつではないかと思います。
以前はこの石張りはなされていませんでした。
大山祗神社のクスノキの根元に石張りがなされた理由
このクスノキ、「根の周りを息を止めて3周すると願いが叶う」という言い伝えがあります。
その言い伝えを実践しようと、根の周りを走る方なども散見されました。
しまなみのシンボルといってもいい大楠ですので、近づく人も多くいらっしゃいます。
その結果、地面が固くなって、根が呼吸困難になり、少しずつ衰退していたのだと思います。
その対策として、この石播舗装が施工されたのではないかと思うのですが、これが逆効果だったのではないのかと思うのです。
石舗装にしたことで、完全に根は呼吸できなくなったのではないかと思います。
大宰府天満宮のクスノキを復活させた方法
ここで、衰弱したクスノキを回復させた事例を紹介します。
学業の神様として知られる福岡県の大宰府天満宮は、飛梅に代表される梅の花で有名ですが、実は境内の中には樹高20mを越す大楠も国の天然記念物に指定されている、大宰府天満宮の歴史を感じさせる重要な樹木です。
樹齢は大山祗神社のクスノキほど古くなく、800年から1000年と推測されています。
これらの大宰府のクスノキが、著しく衰弱した時期がありました。
これらのクスノキを回復させた方法が、参考になるのではないかと思い紹介させて頂きます。
大宰府天満宮のクスノキが衰弱したわけ
太宰府天満宮のクスノキを著しい衰弱から回復させることに成功したのは、九州大学林学科の矢幡教授の指導によるところが大です。
矢幡教授は衰弱しているクスノキ周辺の根の調査をすることで、以下の知見を得ました。
クスノキの周辺土壌は固くなっていて呼吸ができない
大宰府天満宮には、年間に800万人が訪れるといわれます。
これらの利用者による踏圧は相当なものです。
ただし、衰弱していたクスノキは、すべてが通行路の傍にあったわけではなく、それほど通過人数が多くない広場の中にあるクスノキについても、衰弱する様子が確認されていました。
土壌の固結のほかにも原因があるのではないかと、矢幡先生は考えたわけです。
クスノキの根の周りの土壌が強酸性化
矢幡先生は植物生理が専門の先生なので、クスノキの衰弱の原因になっているのは、踏圧による固結だけが原因ではないだろうと考えました。
そこで土壌について調査したところ、おどろくべき事実がわかりました。
なんと、根の周りの土壌のpHの値がpH3~pH4という、自然界ではありえないほど、酸性が高い数値であったということなのです。
さらに調査を進めると、土壌にパイライトという物質が生成されているという結論にたどりついたのです。
難しい生成過程は、パイライトの生成について検索すれば出てきますが、ちょっと頭が痛くなるので、ここでは割愛するとして、太宰府天満宮のクスノキの周辺の土壌に、なぜパイライトが生成されたかということが重要です。
海が近いところの土壌で生成しやすいパイライト
大宰府天満宮は今でこそ福岡の内陸に位置していますが、古代には海がもっと近くまで入ってきていたとされています。
この海砂に含まれる塩基が還元状態であったものが、地下水位などが下がることによって酸化されたことで、強酸性となったと結論付を行いました。
大山祗神社のクスノキも太宰府天満宮のクスノキと同じような状況下にある
このようにしてみると、大山祗神社のクスノキも太宰府天満宮のクスノキも、同じような状況下にあることがわかります。
どちらも
- 海が近い
- 踏圧を受けている
という、大きな共通点があります。
つまりは、太宰府天満宮で行った衰弱対策が、大山祗神社の「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」を衰弱から回復させるための対策にも、適用できると思うのです。
それでは大宰府天満宮ではどのような対策を行ったかみてみましょう。
太宰府天満宮のクスノキを衰弱から回復させた方法①:土壌の入れ替え
大宰府天満宮のクスノキを回復させた方法の一つ目は、土壌の入れ替えです。
パイライトが発生し強酸性化した土壌を中和することは合理的でないとの判断から、クスノキの周囲の土壌を良質の土壌に総入れ替えをしたそうです。
太宰府天満宮のクスノキを衰弱から回復させた方法②:ウッドデッキの設置
大宰府天満宮のクスノキを回復させた方法の二つ目は、ウッドデッキの設置です。
土壌を良質土に入れ替えても、踏圧が同様にかかるのでは、また同じような結果になってしまいます。
一方で、舗装をして踏圧を遮ったとしても、今度は根が呼吸をできなくなってしまいます。
そこで、なるべく踏圧が根に影響を与えないために、ウッドデッキを設置しました。
ウッドデッキを設置することで、踏圧をうけるのはデッキの根太の部分だけであり、根の呼吸を妨げることも回避できたということなのですね。
大山祗神社の御神木「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」を回復させるために
大山祗神社の御神木「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」を衰弱から回復させるために、大宰府のクスノキの回復手法を簡単に引用して紹介させて頂きました。
「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」を衰弱から回復させるためには以下の手順が必要であろうと思います。
- クスノキの周りの土壌の物理性と化学性についての調査
- 調査した結果に基づき必要な土壌改良方法の選定
- 踏圧をうけないような根の周囲の対策
この記事が大山祗神社に縁の深い方の目に触れて、是非「小千命(おちのみこと)御手植えの楠」が回復すればとよいなと思っています。
ここで紹介したのは、矢幡教授からかつてお聞きした内容を、サイト管理人2ka-tsukaが思い起こしながら記述したものです。
詳しい論文と実際に行った記録文章については、以下の論文を国会図書館から取り寄せることができます。
- 社叢学研究5 2007.3 大宰府クスノキ樹勢衰弱原因について
- 太宰府天満宮クスノキの衰弱原因の検討と対策 (Ⅰ)土壌のpHパイライトの影響 第108回日本林学会発表データベース 日本林学会 1997
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